和紙文佐倉さん、もうやめて!月島さんはリセット人生を始めた · 第2話設定≡

佐倉さん、もうやめて!月島さんはリセット人生を始めた第2話

この話は約2793字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

午前0時。

月島明日香は悪夢にうなされて、突然飛び起きた。額にはびっしょりと汗が浮かんでいた。

次の瞬間、彼女の鼻先に、嫌いなあの消毒液の匂いが漂ってきた。この匂いは、彼女が一番苦手なものだった。

月島明日香は一瞬、呆然とした。彼女は確かに死んだはずじゃなかったのか?

なぜ、まだ生きているの?

その時、パチンという音と共に、暗闇だった病室が突然明るくなり、眩しい光が彼女の目を痛ませた。

「悪夢でも見たのか?」

冷たい男の声が響き、続いて長い脚を一歩踏み出して彼がベッドに近づいてきた。背の高い彼の影が光を遮り、彼女の小柄な体を完全に覆い隠した。

「さ......佐倉遼一?」月島明日香は恐る恐る顔を上げ、隣に立つ男の、骨の髄まで嫌悪感を抱かせるその顔をはっきりと確認すると、驚愕のあまり目を見開いた。「来ないで!」

どうして、またこの悪魔の元に戻ってきたの?

彼女は本能的に後ずさりし、抗おうとした。

頭の中は混乱し、佐倉遼一の姿を目にした瞬間、言いようのない恐怖と絶望が彼女を襲い、息苦しさで胸が締め付けられた。

佐倉遼一は動きを止め、その鋭い目が一瞬にして冷たい霜のような冷徹さを帯び、彼女を不快そうに見下ろした。その美しい顔には暗雲が立ち込め、険しい表情が浮かんでいた。

「先生を呼んでくる」

冷たく低く響くその声は、まるで鋭い刃のように彼女に危険を告げていた。

ドアが「バンッ」と音を立てて閉まると、月島明日香の張り詰めていた神経はようやく解けた。

あの男が去った後、彼の圧倒的な存在感が消えた病室で、明日香は慌てて布団をめくり上げた。だが、その時、鋭い痛みが手首から走った。

彼女が手元を見ると、手首には包帯が巻かれていた。――彼女は手首を切ったのか?

月島明日香は痛みに耐えながら、もう片方の手でベッドサイドにあった携帯を手に取り、ボタンを押してカレンダーを確認した。

その瞬間、彼女は時間が止まったように茫然とし、何も考えられなくなった。

今はなんと、2000年――彼女が18歳の年だったのだ。

月島明日香は必死に思い出そうとした。今、彼女が入院しているのは、手首を切って佐倉遼一に告白を迫ったときのことだ。

佐倉遼一は、彼女が10歳の時に、月島康生が外から引き取った義理の息子だった。

明日香が遼一を本気で好きだと確信したのは、彼女が15歳のときだった。家で飼っていたチベタン・マスティフが突然暴れ出し、彼女に襲いかかろうとしたときのことだ。

遼一は彼女を庇い、自分の体で覆い隠して守ってくれた。彼の腕はマスティフに噛まれ、血が止まらずに流れ出していた。

彼の声が彼女の耳元で響いた。「怖がるな、目を閉じろ!」

月島明日香は、震えながら彼の手で覆われた瞼の温かさを感じていた。それはとても温かかった......

今でも彼女は忘れられない。あの時、佐倉遼一が与えてくれた安心感は、彼女にとって何にも代えがたいものであり、彼への強い執着の原因でもあった。

二十代の佐倉遼一は、すでに成熟した男性の落ち着きと風格を備えていた。その顔立ちは整っており、剣のような眉、星のように輝く目、広い肩、細い腰、そして引き締まった狭い腰回りが特徴だった。しかし、彼はいつも冷たく、誰に対しても一定の距離を保ち、笑顔を見せることは滅多になかった。

数日前、佐倉遼一の誕生日だった。月島明日香はその日に、自分自身を“サプライズプレゼント”として彼に捧げるつもりだった。彼のベッドに全裸で横たわり、彼を待っていた。

もう彼女は成人しており、すべてを捧げる覚悟があったのだ。

しかし、深夜に帰宅した佐倉遼一は、ベッドに横たわる彼女を見るなり、露骨に嫌悪感を表し、彼女を床に投げ捨てた。

「恥を知れ!」と彼は彼女を叱責した。

あれが、佐倉遼一が彼女に初めてあんなに激怒した瞬間だった。

その夜、彼はドアを乱暴に閉め、出て行った。そして彼女を避けるために、何日も姿を消した。

月島明日香は、彼の居場所をどう探っても掴むことができず、ついにこの愚かな手段を選んだ。――手首を切り、彼を無理やり呼び出そうとしたのだ。

これまでの彼との関係を思い返すと、その結果に恐怖を感じた。

彼女は震えた。

数分後、数人の医者が慌ただしく部屋に入ってきた。

佐倉遼一は暗い表情でドアのところに立ち、冷ややかな目で月島明日香の青白い顔を一瞥した。

彼女が目を覚ました時、彼を見つめるその目には、恐怖と絶望に満ちた悲しみがあふれていた。

彼女はなぜ、自分を恐れているのだろう?

医者は月島明日香の体調を確認し、隣の同僚と少し話し合った後、ようやく言った。「患者さんの熱はもう下がっています。明日には退院手続きを行えます。手首の傷ですが、帰宅後は水に触れないように気を付けてください。一週間後に抜糸します」

冷たい表情を浮かべていた佐倉遼一の顔に、ほんの少しだけ安堵の色が現れ、眉間の皺が緩んだ。「ありがとうございます」

医者はそれ以上滞在せず、いくつか注意事項を伝えると、病室を後にした。

医者が出て行くと、狭い病室には月島明日香と佐倉遼一の二人だけが残った。

月島明日香は緊張しながらベッドに横たわり、目を閉じたまま彼を見ないようにしていた。

佐倉遼一は腕時計をちらりと見てから、落ち着いた声で言った。「あと30分で会議がある。会社に戻らないといけない。明日8時に迎えに来るから、退院の手続きをする」

月島明日香は唇をわずかに動かした。佐倉遼一はいつもこうだ。拒絶する一方で、また彼女に優しく接する。まるで彼が本当に自分を愛しているかのような錯覚を抱かせるほどに――。

月島明日香は何も言いたくなかった。正確に言えば、佐倉遼一とはもう何も話したくなかった。

彼を見ることさえも避けたかった。

死の直前に感じた痛みはまだ消えていない。だから、彼女はこんなにも平然と佐倉遼一と向き合うことなんてできなかった。

彼女が黙っているのを見て、佐倉遼一の陰鬱な瞳が細まり、月島明日香をじっと見下ろした。彼の目には、わずかな不快感が浮かんでいた。

「これからは、もう自分を傷つけるような愚かな真似はやめろ。もし恋愛をしたいなら、他の人を探せばいい。俺はお前にはふさわしくない」

月島明日香の胸が締め付けられるような痛みを覚えた。この言葉は、前世の佐倉遼一が言ったものとまったく同じだった。

彼女はまだ覚えている。前世で彼がこの言葉を言ったとき、彼女は泣いて生きる希望を失い、極端な行動に出てビルから飛び降りようとまでした。しかし、その時も佐倉遼一は冷淡に、「死にたければ好きにしろ」と言い放っただけだった。

今の月島明日香は、すでに一度死んだ身だ。そして、佐倉遼一への愛も、数え切れないほどの絶望の中で、すっかり消え失せてしまった。

彼女は目を開け、依然として青白い顔で、静かに佐倉遼一を見つめた。

佐倉遼一、これからは、もうあなたを愛さない――。

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