交際8年、結婚準備中に浮気されました第2話
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瞳に溜まっていた涙が、ついにこぼれてしまった。
数秒間呆然とした後、私はチャット画面を開いた。
やり取りは多くないが、その一言一句が確信を突いていた。
【奥さんは家にいるの?会いたいよぉ】
【今夜の月、すごく綺麗だね。あなたが好きな下着、買っちゃった】
【また奥さんと喧嘩?結婚前の女ってヒステリックで理不尽だよね、やだやだ】
……
それに対する亮人の返信は簡潔だった。
【うん】、【いない】、【待ってろ】。
その【待ってろ】という返信の日時は、先週の金曜日の夜六時。
あの日、私たちは一緒に結婚式の招待状を書く約束をしていた。
私は夜の九時まで待ち続け、書き上げた招待状で机がいっぱいになっても、彼は帰ってこなかった。
スマホを握る指先が白くなる。目の前のメッセージに吐き気さえ催した。
ふと、その女のアイコンに目が留まった。
写っていたのは恋人繋ぎをした手の写真。男の手の薬指には、私と亮人が一緒に選んだ結婚指輪が光っていた。
どんなことがあっても外さないと、彼は私に誓った。
確かに。彼はその約束を守った。
浮気をしている最中でさえも。
胸の奥に黒い感情が渦巻き、五臓六腑を焼き尽くしていく。
試着室のドアが突然ノックされた。
「京子、まだか?俺のスマホ、中にある?」
指が火傷したかのように激しく震えた。私は慌てて画面を閉じ、スマホを元の位置に戻した。
「待って、すぐに出るわ」
着替えを終え、亮人もスマホを手にした。
彼は何も気づかず、レストランへ食事に行こうと提案してきた。
車中、彼は上機嫌だった。
カーステレオからは私のお気に入りの曲が流れ、サンバイザーの裏には、付き合い始めた頃の二人のツーショット写真が挟まれている。
これほど細やかで気配りのできる男が、婚約者を裏切って浮気をしているなんて、誰が想像できたのかしら。
私にも理解できなかった。
なぜ?
どうして浮気なんて?私が至らないから?
彼が残業の時は、一晩中玄関の明かりをつけて待っていた。
胃腸が弱い彼のために、私は毎朝五時に起きて特製のお粥を煮込み、薬を飲むよう言い聞かせた。
彼が刺激を求めたなら、私はどんなに恥ずかしくても、見様見真似で彼を誘う術さえ身につけた。
そのたびに彼に苦笑いされたとしても。
それとも、彼の愛が足りなかったのか?
付き合って八年。大学のサークル時代から結婚まで。
彼が私に告白した日、緊張のあまりラブレターを持つ手が震えていたのを覚えている。
彼が留学していた年、帰国のチケットが取れずに会えなくて、電話越しに目を腫らすほど泣いていたことも。
そして今年の初め、私が癌だと誤診された時。
亮人は表面上は気丈に振る舞っていたが、深夜二時、ベランダに隠れて声を殺して泣いていたのを私は見た。
彼は私に隠れて遺書まで書き、友人にこう漏らしていた。
「もし京子が助からないなら、俺も一緒に死ぬ」
あれから、まだ四ヶ月しか経っていない。
あと二日で、私たちは結婚するはずだった。
親戚や友人への連絡も済み、式場もドレスも準備万端だ。
あとはゴールテープを切るだけだったのに。
彼はこの土壇場で、浮気をした。
よりによって相手は、私のドレスを用意してくれたあの店員だった。
いつの間にか目頭が熱くなっていた。私は深く息を吸い、亮人に全てを問いただそうとした。
しかし横を見ると、彼はスマホを手に満面の笑みを浮かべている。
隠しきれていない画面に、あの女のアイコンが見えた。
出かかった言葉を、ぐっと飲み込んだ。
あの「雅美」という女に、会ってみる時が来たようだ。
……
翌日、結婚式の最終リハーサル。
私はあえてドレスショップに連絡し、あの雅美という店員を指名して呼び出した。
ホテルのメイクルームで、私は彼女と二度目の対面を果たした。
一度目は店で、大勢いるスタッフの中の目立たない一人として。
記憶にあるのは、肌が白く、胸が大きいということだけ。
そして二度目の今は、私の婚約者の浮気相手として。
私に会うと知ってか、彼女は気合を入れて着飾っていた。
少し痛んだ茶髪の巻き髪、清純さを装いつつもどこか野暮ったいメイク、そして隠そうともしない豊満な胸元。
だが、私が最も注目したのは、彼女の胸元で輝くゴールドのネックレスだった。
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