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もしこの人生で、あなたと恋に落ちていなかったなら第2話

この話は約1456字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

瑶葵はそのまま陸川家に住みついた。

これで彼ら四人家族は、ようやく再会を果たした。

双子は瑶葵の姿を見ると、驚きと喜びが入り混じったような表情を見せた。

とくに妹の方は興奮を抑えきれず、声を上げた。

「ママ!」

すかさず明茂が動いた。春陽を抱き寄せ、頬にキスを落とすと、優しい笑みを浮かべて言った。

「ほら、娘が君のこと呼んでるぞ」

だが実際には、この双子はすでに三か月前から陸川家に住んでいた。

その間、一度として春陽を「ママ」と呼んだことはなかった。

それでも、真実を知る前に、春陽は二人を我が子のように大切にしてきた。

そして今――秘密を守るためか、娘・陸川安菜(りくかわ あんな)は冷たい目で春陽を睨みつけ、不機嫌そうに言い放った。

「ママ、ナッツ食べたい。剥いて」

ナッツは固く、剥くと指が痛くなる。

この女に痛い思いをさせて、パパを取り返してやる。

以前から安菜はよく春陽にナッツを剥かせていた。春陽はただ、子どもが好きなのだと思い、疑うことなく剥いてあげていた。

だが今、その目に浮かんだ悪意を見た瞬間、彼女の胸はすっと冷たくなった。

「食べたいなら、家政婦さんに頼みなさい」

春陽の代わりに明茂が前に出て、彼女の手をそっと撫でながら言った。

「こんなに柔らかい手に、ナッツなんて剥かせられないよ」

その言葉に、瑶葵の顔色がみるみる曇っていった。

そして、春陽を睨みつけるような視線を密かに送りながら、突拍子もないことを言い出した。

「明茂さん、あの念珠は?」

明茂の左手首には、いつも念珠が巻かれていた。

それは春陽が遥か遠くの名刹まで赴き、標高三千メートルを超える山をひざまずいて登り、命を削って得た念珠だった。

しかもその念珠は寺の長老に開眼供養をしてもらった。

明茂はその想いに心を打たれ、それ以来ずっと身につけていた。

だが今、その念珠は消えていた。

「念珠……?今朝までは確かに着けてたはずだけど……」

明茂は戸惑いながら周囲を見渡した。

そのとき、彼の視線は瑶葵の艶やかな目とぶつかった。

瑶葵はほんのり顔を赤らめ、唇を舐めながら、ゆっくりと自分の股間に手を滑らせた。

そして体をくねらせながら、甘えるように囁いた。

「明茂さん……お腹がちょっと気持ち悪くなってきたの……少し休みたいから、手を貸してくれる?」

その意味は、あまりにも明白だった。

明茂の呼吸が一瞬で荒くなり、かすれた声で言った。

「春陽、瑶葵を部屋に連れて行ってくる。子どもたちのこと、頼む」

言い終えるや否や、彼は瑶葵の腰を抱えて階段を上がっていった。

春陽の胸の奥は、さらに冷えきっていった。

彼女は家政婦に子どもたちの面倒を頼むと、無言で二階へと向かった。

寝室のドアは半開きだった。

明茂はあまりに急いでいたのか、鍵をかけ忘れたのだろう。

「お前、正気か?なんで俺の念珠をそんなとこに……!」

怒っているような口ぶりだったが、声に責めるような気持ちは微塵もなかった。むしろ、どこか楽しげですらあった。

「んっ……明茂さん……奥まで入れちゃって、自分じゃ取れないの……助けて……」

瑶葵は彼の手を取ると、そのまま自分の下腹部へ導いた。

ほどなくして、念珠が床に落ちる音がした。

どろりとした液体にまみれた一粒が、ころりと春陽の足元まで転がってきて、そこで止まった。

がっかりした春陽は、静かに目を閉じた。

あの念珠は、彼女が命を削って手に入れた祈りそのもの。それが今、二人の淫らな遊び道具にされていた。

この二人は彼女の目の前で、その愛を踏みにじり、その信仰すら汚した。

そんな男、そんな結婚、もう、いらない。

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